駆け出しエンジニアの気ままにブログ

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【本まとめ】「快感回路」の13個のポイントについてまとめてみる。  

表紙

・快感ってそもそもなんだっけ?
・どのような時に快感を得るのか?
・快感を感じるプロセスはどのようなものか?
・快感は制御できるのか?

といったことに興味をもって本書を手にとりました。

本書では、実験のエビデンスとともに、快感に関する仕組みや知識が紹介されています。

快感回路への直接刺激による実験、向精神薬の効果、依存症などなど、興味深い反面、怖いなーと思うような内容が満載です。

今回は、勉強になったなーと思う13個のポイントをまとめていきます。

(1)私たちが何かをしようとするとき、その動機づけの鍵となるのは快感である。そもそも人類が生存し、遺伝物質を次世代に伝えていくためには、食べ物、水、セックスが〈報酬〉的なものと感じられなければならない。

「快楽」は一種の「信号」であり、生き物のメカニズムはこの信号を求めるようにプログラムされているとも言えますね。

どんなもの、どんなときに「快楽」を感じるのか?「快楽」というものの秘密を紐解くことで、生物的、遺伝的な人間の遺産が、垣間見えるかもしれないです。


(2)非合法な悪習であれ、エクササイズ、瞑想的な祈り、慈善的な寄付行為といった社会的に認められた儀式や習慣であれ、私たちが生活の中で「日常から外れた」と感じる経験はほとんどの場合、脳の中の、解剖学的にも生化学的にも明確に定義される「快感回路」(報酬系)を興奮させるものである。買い物、オーガズム、学習、高カロリー食、ギャンブル、祈り、激しく続くダンス、オンラインゲーム、これらはいずれも、脳の中で互いにつながり合ったいくつかの決まった領域へと収束する神経信号を生み出す。この一群の脳領域は、まとめて内側前脳快感回路と呼ばれている。この回路はもう一つの戦いの場でもある。快感のダークサイド、そう、依存症だ。

さまざまな快感は脳の内側前脳快感回路と呼ばれる領域に収束する神経信号を生み出す特性があり、この回路は依存症とも関係の深い領域とのこと。「内側前脳快感回路」は、人の行動を司っているといっても過言ではない領域ですね。


(3)一連の実験から、ラットは食べ物や水以上に、快感回路の刺激を選ぶことが判明した(空腹でも、喉が渇いていても、レバーを押し続けた)。自分の脳を刺激しているオスは、近くに発情期のメスがいても無視したし、レバーにたどり着くまでに足に電気ショックを受ける場所があっても、そこを何度でも踏み越えてレバーのところまで行った。子どもを産んだばかりのメスのラットは、赤ん坊を放置してレバーを押し続けた。なかには他の活動を一切顧みず、一時間二〇〇〇回のペースで二四時間にわたって自己刺激を続けたラットもいた。そのようなラットは、放っておくと餓死してしまうので、装置から外してやらなければならないほどだった。そのラットにとって、レバーを押すことが世界のすべてになってしまっていたのだ。

生理的な欲求を超える動機を持つのは、「生きるための自然さ」から大きく歪んでいるように見えます。「生きること」以上の欲求が生じる回路というのは不自然で、ある意味で壊れているとも言えるじゃないかと。。道徳的な観点で、いろいろと考察できそうなテーマですね。


(4)快感回路のプロセスは以下のとおり。
・腹側被蓋野(VTA)のニューロンが活動するとき、短い電気的パルス(スパイク)がニューロンの細胞体(これはVTAの中にある)から発し、軸索と呼ばれる細長い繊維を伝わっていく。軸索の反対の端には軸索端末と呼ばれる特別な構造がある。一部のVTAニューロンの軸索端末は、VTAから遠く離れた側坐核と呼ばれる領域に達している。
・電気的なスパイクが軸索端末に達すると、端末内にある膜でできた小さな袋、シナプス小胞に蓄えられていた神経伝達物質ドーパミンの放出が促される。VTAのニューロンはドーパミンを放出する軸索を脳の他の領域にも伸ばしている。たとえば扁桃体と前帯状皮質(情動の中枢)、背側線条体(ある種の習慣の学習形式に関係する)、海馬(事実や出来事の記憶に関係する)、前頭前皮質(判断や計画を司る。ヒトではここがほかの哺乳類よりもとくに大きい)といった領域だ。
・VTAのニューロンは、信号を送り出すだけでなく、他の脳領域からも電気化学的情報を受け取る。とくによく知られているのは、内側前脳束と呼ばれる、前頭前皮質などから(中隔と視床を通って)VTAにつながる軸索の集まりだ。
・内側前脳束の軸索は、興奮性の神経伝達物質グルタミン酸をVTA内に放出する。VTAのニューロンはこの信号を受け取るとスパイクを発火する。そのスパイクが軸索を伝わって投射先の領域に達し、そこでドーパミンが放出される。
・VTAのドーパミン・ニューロンは側坐核のニューロンからも信号を受け取る。しかし側坐核の軸索が放出するのは、抑制性の神経伝達物質であるGABA(ギャバ、ガンマアミノ酪酸)だ。この物質はVTAニューロンの活動を抑え、ドーパミンの放出を阻害する。
・先に述べたように側坐核のニューロンへはVTAからドーパミン軸索が届いているが、側坐核はこのほかに、前頭前皮質、扁桃体、海馬からもグルタミン酸を含む興奮性の軸索が届いている。
・ある経験がVTAのドーパミン・ニューロンを活動させ、その結果、投射標的(側坐核、前頭前皮質、背側線条体、扁桃体)にドーパミンが放出されるとき、その経験は快いものと感じられる。そして、このような快い体験に先立つ(あるいは伴う)感覚や行動が手がかりとして記憶され、ポジティブな感情に関連づけられる。
・標的領域で放出されたドーパミンはシナプス間隙(ニューロンとニューロンの間の液体で満たされた隙間)に拡散し、標的ニューロンの受容体を活性化して作用を引き起こす。このとき、放出されたドーパミンは拡散しきってしまうわけではない。大半はドーパミン・トランスポーターと呼ばれるタンパク質の作用で元の軸索端末に再び取り込まれ、次の放出に備えて小胞に再貯蔵される。このため、ドーパミン・トランスポーターの働きを阻害すると、標的ニューロンの受容体へのドーパミン本来の作用が拡大強化され、信号がより強く、長時間伝わることになる.

ある経験が快いものと感じられ、ポジティブな感情に関連付けられる仕組みの詳しい説明です。VTA、側坐核、ニューロン、シナプス小胞、ドーパミン、グルタミン酸、GABA、ドーパミン・トランスポーターあたりが重要プレイヤーのようですね。

整理すると、イベント → VTAドーパミン・ニューロン活動 → 電気的パルスが内側前脳束経由で側坐核に到達 → 軸索端末がドーパミン放出を促す → 放出されたドーパミンが標的ニューロンの受容体を活性化 と言った感じでしょうか。

VTAドーパミン・ニューロンに電気パルスが発生するイベントとそうでないイベントの差分、GABAやドーパミン・トランスポーターが働く条件あたりを知ることが快感をハンドリングするポイントと言えそうです。イメージしやすくするために、いくつかの参考画像も記しておきたいと思います。

VTAimage

シナプスimage


(5)脳スキャンにより、生きている脳の中で快感回路が活性化している様子を観察することができるようになった。この回路は〈悪徳〉的な刺激で活性化する。オーガズム、甘くて脂肪たっぷりの食べ物、金銭的報酬、ある種の向精神薬などだ。しかし驚くべきことに、〈美徳〉とされる行動の中にも、同じ効果をもたらすものが多い。趣味のエクササイズ、ある種の瞑想や祈り、社会的な評価を受けること、慈善的な寄付行為さえも、快感回路を活性化しうるのだ。美徳と悪徳は神経から見れば一つであって、どちらを向こうとも、快感が私たちを導いていることに変わりはない。

快感回路は、美徳と考えられるものに対しても活性化していることが実験から確認されているとのこ。道徳(善・悪)ってなんなのか?について、改めて考えてしまうような結果です。


(6)快感が私たちにとってこれほど力を持つのは、快感回路と脳の他の部分との相互連絡によって、記憶や連想や感情や社会的意味や光景や音や匂いで飾り立てられているからだ。脳の回路レベルでのモデルは、快感を生じさせるのに必要な条件を教えてくれるが、それだけでは十分ではない。快感が持つ非日常的な感覚やその感触は、快感回路と関連する感覚や感情がつながり合った網の目の中から生じてくる。

快感自体は電気的な信号だけど、その信号を心地よいと感じるか?は、想起される記憶や感情、社会的な意味解釈と複雑に絡み合っているということ。

意図的に信号を流すことができたとしても、想起される記憶や感情がネガティブなものだった場合、刺激は苦痛な記憶や感情を強化してしまうというのは、行動分析学の分野の強化/弱化あたりに近いテーマの気がします。


(7)向精神薬から歴史からの学び
・第一に、向精神薬はさまざまな社会的文脈で使われるということだ。治療薬にもなれば、宗教的な儀式の品にもなり、純粋な娯楽としても、服用者を特定の社会集団(エリート、よそ者、反逆者など)に帰属させるものとしても使われる。
・第二に、このような文脈は変化しうるし、重なり合うこともある。古代ローマのアヘンと一九八〇年代のクオルードの錠剤は、どちらも本来は医薬品だったものが主に娯楽目的に転用された。アマゾン流域のアヤワスカは、治療薬でもあり宗教的な祭品でもある。
・第三に、宗教的戒律や法律が、薬物使用に思わぬ形で大きな影響を及ぼすことがある。一九世紀アイルランドのエーテル乱用は、かなりの部分で、イギリス政府に押しつけられた重い酒税と、マシュー神父による完全禁酒運動の影響により引き起こされたものだった。ローマ時代にアヘンが爆発的に流行したのも、セプティミウス・セウェルス帝が、主に税収を増やして軍事費にするためにアヘン販売を解禁してからのことだった。
・これらの事例から学べるいちばんの教訓は、もっと単純なことだ。どんな文化であれ、どんな時代であれ、人間は自らの脳の機能を変容させる方法を必ず見つけ出し、いっぽう、統治者や宗教制度といった文化的な強制力を持つものは、常にとは言わないまでも、そうした薬物の使用を規制しようとしてきたということである。

歴史から、人はいつの時代も薬物を求めていること、また、薬物を管理下におくことで、人々をコントロールしている人がいることが分かります。


(8)依存性の薬物は、内側前脳快感回路、特にVTA(腹側被蓋野)のドーパミン・ニューロンを活性化する。この活性化が、薬物が生み出す多幸感の核となる。感覚経験は脳の回路に記憶を書き込むことができる。その記憶痕跡は、少なくとも部分的には、長期増強と長期抑圧によりシナプスで作られる。最後に、依存症には進行段階があり、最初の多幸感は次第に耐性と依存性と激しい渇望へと進んでいく。これらは薬物の摂取を止めてから何年も残ることがある。渇望感が持続することが再発率の高さにつながる。再発のきっかけはストレスであることが多い。

強い刺激の欲求と、耐性による感じ方の鈍化から、依存症が生じるとのこと。めちゃくちゃ美味しいケーキを食べてしまうと、普通のケーキは美味しく感じなくなってしまう。通常の刺激では幸福感を感じられなくなってしまうのは、恐ろしいですね。


(9)大半の文化圏では、食べ過ぎと肥満は意志の力が弱いせいだとされている(ダイエット業界もそう主張する)。しかし、遺伝学的には、その考え方に対する強力な反証がある。養子、双子や家系を対象とした研究データが示すところでは、体重の軽重は、80%遺伝的に決まっている。結論として言うと、大半の肥満患者はレプチン欠損ではなく、レプチン抵抗性があるということだ。彼らは循環してきたレプチンを食欲の抑制や熱量消費の減少へとつなげる分子的メカニズムの一部を欠いている。

肥満患者はレプチン抵抗性があり、この特性は遺伝されるとのこと。ダイエットを成功させるためには、意志の力だけでなく、自らの特性を把握した上で、(自身の食欲を含めて)対策を講じる必要がありそうです。


(10)オーガズムも含め、あらゆる感覚体験は、統合された全体として感じ取られる。日常生活の中ではこうした体験を要素に分解することは容易ではないが、神経科の診療所ではボンネットを開けて内部を覗く機会がある。視床のある場所を電極で刺激すると、生理学的にオーガズムと呼べる特徴(心拍増加、筋収縮など)をすべて引き起こすことができるが、快感は感じられないことがわかっている。これは快感回路の刺激実験と反対の結果だ。快感回路の刺激では快感は感じられたが、必ずしも性的なものではなかった。

オーガズムを脳の反応と身体の反応の2つに分けて考えると、電気信号により身体の反応を引き起こしてもオーガズムの快楽は得られないが、電気信号により脳の反応を引き起こすと(身体の反応なしに)快楽が得られるとのこと。

通常、「オーガズムを求める」=「快楽を求める」だと思いますが、快楽は、単純な刺激だけでなく、記憶や感情、社会的意味にも大きく引っ張られる部分であるということに留意が必要です。身体の反応ばかりを追い求めてしまうのは、オーガズムの本質からは逸れていくことになりそうです。要は、心のつながりが大事ってことですかね。


(11)ビデオゲームというまったく自然とはかけ離れていて本来的な報酬性など一切ない行動が、被験者全員で快感回路をある程度活性化したということである。おそらくビデオゲームは、目的達成や個人的関与に関係するごく一般的な快感を引き出すのだろう。また、多くのビデオゲームは、きわめて効果的な報酬スケジュールを持っている可能性が高い。ちょうどタバコと同じで、快感自体は短いが、立ち上がりが早く、何度も繰り返されるという形だ。

ビデオゲームのような直接生存には関係ないものでも、勝ったとか、上手くいった、などの自己肯定感の刺激から快感回路の形成につながる。快感回路の形成には、立ち上がりが早く、なんども繰り返される刺激が有効とのことです。この性質を活用すると、習慣づけをうまくコントロールできそうですね。


(12)快の反対は痛みではないのだ。愛の反対が憎しみではなく無関心であるのと同じように、快の反対は痛みではなく倦怠、つまり感覚と経験への興味の欠如なのである。

苦しさも、楽しさも、辛さも、嬉しさも、いわゆる感情の振れ幅のあるものは、神経信号を発しているという点では類似です。もっとも根源的な欲求は「ただ、感じたい」(=生きている実感)ということなのかもしれません。


(13)カーツワイルの予測によれば、二〇三〇年代後半には、私たちは日常的に脳を分子単位でスキャンしており、ニューロンの機能と可塑性を支配する法則を完全に理解できているため、自分の精神プロセスを強大な未来のコンピューターに「アップロード」しているという。「このプロセスは人間の人格、記憶、技能、来歴のすべてをキャプチャするものとなるだろう」とカーツワイルは言う。

2030年ではないかもしれないですが、数十年後の未来には、いわゆるパーソナリティーをコピーする人工知能は存在しているんだろうなーと思います。

SNSの発言内容からユーザーの癖を学習し、そのユーザーに真似たチャットボットを作成する名どの試みは現在も見受けられるし、インプットとアウトプットから精神プロセスを推論学習する仕組みは実現可能のように思います。あるインプットに対し、オリジナルと同じアウトプットを選択する精神プロセスモデルの開発はそんなに難しくないことなのかもしれないですね。


ということで、今回は以上です。


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